『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を読んで学んだ内容を整理します。
rebuild.fm で紹介されているのをきっかけに良さそうな本だなと思って購入しました。
筆者も指摘しているように、「健康な食事」は、ネット上で誰でも簡単に検索できる時代。
でも、その多くは科学的な根拠に基づかないものだったり、バイアスのかかった情報だったり、基礎知識なしでは「何が本当に正しいか」判断することが本当に難しいです。
本書は、そんな「健康な食事」に関する曖昧な理解を払拭するために、科学的な統計情報やエビデンスに基づく情報が提供されています。
世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
本書のスタンス
全ての人はその食事によって得られるメリットとデメリットを十分理解した上で、何を食べるか選択すべきだと思っている。甘いものが好きな人にとっては甘いものを食べることで幸せな気持ちになり、幸福度が上がるかもしれない。そういう人にとっては、甘いものをゼロにすることで健康にはなるけれども人生が全く楽しくなくなってしまうこともあるだろう。そのような場合には、幸福度と健康を天秤にかけて、毎日少量の甘いものを食べるという食事を選択するのも合理的な判断であろう。
正しい理解を身につけた上で、どういう食生活を選ぶか考えることが大事だというスタンスです。
本書で学んだこと
医学研究のエビデンスの見方
医学研究のエビデンスは大別して以下の2種類あります。
- ランダム化比較試験:介入群と対照群に分けて、対象物の効果測定を行う。
- 観測研究:食事に関するデータを収集し、グルーピングを行った上で対象物の効果を分析する。
研究手法からも分かるように、基本的に、ランダム化比較試験では「因果関係」、観測研究では「相関関係」を検証しています。
「成分」でなく「食品」 に着目する
「リコピンが体に良い」や「βカロテンが体に良い」といったように「成分」が強調された謳い文句をよく目にします。
しかし、医学研究では、「食品」を対象とした観察研究が中心なので、ある「成分」が健康に良いかどうかは「相関関係がある」という程度の検証に留まっていることが多く、「因果関係」が立証されていることはほとんどありません。
さらに、「食品」として摂取する場合と、サプリメントなどの形で「成分」のみを摂取する場合では、身体にとっての効能が異なるときがあります。
例えば「βカロテン」は、抽出された成分のみを摂取した場合、肺がんや心筋梗塞のリスクを引き上げる「因果関係」が検証されています。
そのため、近年は「成分」でなく「食品」 に着目する思考が主流となっています。
果物と野菜を1日400g食べる
16の観測研究の結果の統合(メタアナリシス)により、果物と野菜の摂取量が1日5単位(約400g)あれば、心筋梗塞や脳卒中のリスクが低下する「相関関係」が立証されています。
しかしながら、「フルーツジュース」は果物から作られますが、その摂取量が多い人ほど、糖尿病のリスクが高まる「相関関係」が立証されています。
これは、果物がジュースに加工されるタイミングで不溶性の食物繊維が取り除かれることが理由です。
果物と野菜はできるだけ、そのままの状態で食べるようにしましょう。
なお、マスクメロンは「果物」ですが、高血糖値との「相関関係」が検証されているので注意すべきです。
地中海食は相対的に病気になるリスクが低い
エクストバージンオリーブオイルやナッツ類、野菜・果物・魚を中心とした「地中海食」は、ランダム化比較試験を含む複数の研究により、低脂肪食などの他の食生活と比べ脳卒中やがん、糖尿病のリスクが低くなることが立証されています。
一般的な地中海食は、下表(本書より引用)の通り。
魚は動脈硬化のリスクを下げる
複数の研究を統合したメタアナリシスによると、魚を1日85g〜170g摂取する人は、全く摂取しない人と比較して心筋梗塞により死亡するリスクが36%低下することが立証されています。
これは、魚に含まれるオメガ3脂肪酸の効果だと考えられています。
塩分の摂取は心筋梗塞や脳卒中のリスクを上げる
塩分の摂取量が多いと高血圧になり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇することがランダム化比較試験を含む複数の研究で明らかになっています。
下表(本書より引用)の通り、国別でみると日本人の塩分摂取量は高いです。
これは味噌汁、漬物など日本食には塩分が多く含まれることが理由だと考えられています。
スパイスやハーブなどを多く使うことで、意識的に塩分を抑えることが大事です。
白い炭水化物より茶色い炭水化物を選ぶ
炭水化物は、体内で「糖」として吸収されます。
下表(本書より引用)からも分かるように、白米の摂取量と糖尿病になるリスクには正の相関関係があることが複数の研究から明らかになっています。
一方、玄米や全粒粉などの精製されていない「茶色い炭水化物」の摂取量と糖尿病になるリスクには正の相関関係がないことが複数の研究から明らかになっています。
これは、茶色い炭水化物に含まれる「食物繊維」が、糖の吸収を抑える働きをすると考えられているからです。
白米などの「白い炭水化物」では、精製の過程で食物繊維が取り除かれるので、体の中ではほとんど「砂糖」と同じです。
日々の食習慣としては、なるべく「茶色い炭水化物」を選択するべきです。
加工肉と赤い肉はがんのリスクを上げる
WHOの専門組織である国際がん研究機関(IARC)は、世界中の研究結果を基に、
ハム・ソーセージ・ベーコンなどの「加工肉」は発がん性あり、
牛肉や豚肉などの「赤い肉」はおそらく発がん性あり、
として報告しています。
下表(本書より引用)は、日本人の部位別がん罹患数の推移を示しています。
食事が西洋化するにつれて、がん罹患数が上昇していることからも、前述のIARCの報告は納得感があります。
他にも脳卒中や心筋梗塞など、動脈硬化のリスク上昇との相関関係も複数の研究により明らかとなっています。
なので、加工肉と赤い肉の摂取量は可能な限り抑えたいです。
なお、鶏肉は「白い肉」に分類されていて、鶏肉の摂取量が多い人は大腸がんのリスクが低くなることが検証されています。
本書を読んで、ひと言
全体的な感想
よく「身体が資本」と言われたりしますが、フリーランスとして「属人的」かつ「個人的」に仕事をしていると、良い健康状態を保つことが本当に大事です。
そして、長期的に良い健康状態を持続させるには、「食生活」が1つの重要な要素。
ゴリゴリ、ストイックな食生活を突き進めるかどうかは別として、少なくとも日々の選択について「意識」を持つべきです。
本書を通して、「科学で明らかになっていること」を理解できたので、毎日の食事をどのように考えて選択すべきかがクリアになりました。
食事に関する研究との付き合い方
食事に関する医学研究は臨床実験なので、研究のみを目的とした手段で仮説検証することは難しく、基本的には観察研究などの「相関関係」の検証がメインになるのだと感じました。
その観察研究の積み重ね(メタアナリシス)や別途ランダム化比較試験を実施することで「因果関係」を明らかにしていくのだと理解しています。
このような「合わせ技一本」のようなやり方でも、健康に悪影響がある食品(発がん性や動脈硬化のリスクを高めるなど)を明らかにすることはできます(実際に明らかになっています)。
一方で、「健康に良い影響がある」ということを立証するのはとても難しいと感じました。
例えば、本書では「茶色い炭水化物は健康に良い」とされていますが、個人的には「健康に良い(=プラスの効果がある)」と言えるまでの説得力はありません。
なぜなら、その根拠は「茶色い炭水化物の摂取量が多い人ほど病気にかかるリスクが低かった」というものですが、様々な食品が溢れかえるこのご時世にあえて「茶色い炭水化物」を選択する人は、相対的にバランスの良い私生活(生活リズムや食習慣)を過ごしているはずなので、純粋に「茶色い炭水化物」の効果だけを検証しているか疑問が残るからです。
しかしながら、「茶色い炭水化物の摂取が多くても、病気のリスクは高まらない」とは言えるので、意識的に玄米や全粒粉を日々の食生活に取り入れていきたいと思いました。
まとめると、医学研究では主に “危険地帯” が明らかになるので、それを理解して、習慣的な消費を避けるように選択していくべきです。
No Comments