こんにちは、イナバウアーです。
「海外ノマド」や「デジタルノマド」と呼ばれる人は、複数の国を移動しながら個人の事業活動をしています。
こういう人たちは、どのように所得税の確定申告をするのが正しいのでしょうか?
今回はそんな、海外デジタルノマドのあるべき確定申告、について整理します。
※ 以下の内容は、素人があくまでも個人的に調べたことです。その点、踏まえて参考にしていただけると幸いです。
目次
1 | 脱税は犯罪です |
2 | 国際的な確定申告を理解する |
3 | 脱税しないための最善策:日本で確定申告する |
4 | まとめ |
脱税は犯罪です
本題に入る前にひと言。
日本にいないからといって、どこの国にも所得税を納めていない状態であれば、それは「脱税」ですとなっている可能性があります。(2020年05月05日 表現修正:詳細はコメント欄参照)
そして当たり前ですが、脱税は「犯罪」です。
現行の税法では海外ノマドのような生活スタイルを前提にしていないので、ルールが明確でない部分もあると思います。
だからと言って安易に「納税しなくていい」と判断するのは間違っていますよ。
知らないうちに「犯罪者」とならないよう、積極的に納税する姿勢を持ちましょう。
国際的な確定申告を理解する
まず、国際的な確定申告についてのルールをざっくり理解します。
日本の「居住者」は日本で確定申告
実は「どこの国で確定申告すべきか?」は、国際的に共通した答えがあります。
それは「住んでいる場所で確定申告する」です。二重課税や脱税を防止するために世界各国が足並みを揃えているのですね。
日本の税法も同じ考え方なので、日本の「居住者」はすべての所得を日本で確定申告しなくてはいけません。
つまり、どこの国の「居住者」なのか?、がポイントです。
日本の「居住者」って?
日本の「居住者」は次のように定義されています。
「居住者」とは、国内に「住所」があり、または、現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいいます。
ここでいう「住所」と「居所」は次の通りです。
「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかは、客観的事実によって判断することになっています。また、「居所」とは、「その人の生活の本拠という程度には至らないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
大事なのは、「居住者」かどうかは住所だけで決定しないということです。
他の客観的な事実とあわせて、国内に「生活の本拠」があるかどうか判定されます。
海外ノマドも日本の「居住者」?!
複数の国を移動しながらフリーランスとして活動している人は、ほとんど日本にいません。
このようなケースでも「居住者」に該当する可能性はあるのでしょうか?
国税庁の見解は次の通りです。(国税庁 – No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)より)
ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、例えば、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断することになります。
(注) 滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。1年の間に居住地を数か国にわたって転々と移動する、いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります。
重要なポイントは、『いわゆる「永遠の旅人(Perpetual Traveler, Permanent Traveler)」の場合であっても、その人の生活の本拠がわが国にあれば、わが国の居住者となります』と明記されている点です。
つまり、海外ノマド生活をしていても、日本の「居住者」と判定されることは普通にありえます。
たとえ住民票を抜いととしてもです。
特に数ヶ月単位で滞在国を変えている場合は、どの国の税法でも「居住者」とされず、消去法的に日本の「居住者」と言われる可能性は高いと思います。
日本と外国の両方で「居住者」になってしまう場合は?
1国の滞在期間が長いと「日本」と「外国」の両方で税法上の「居住者」と判断される場合があります。
そのようなケースでは「租税条約」で決められたルールによりどちらの「居住者」にすべきかジャッジされます。
したがって、基本的には両方の国で確定申告が求められることはありません。
なお、国税庁の見解は次の通りです。(国税庁 – No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)より)
外国(A国)の居住者となるかどうかは、A国の法令によって決まることになります。A国で居住者と判定され、わが国でも居住者と判定される場合、租税条約では、二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めています。どちらの国の居住者となるかを判定するに当たっては、わが国とA国との租税条約によりますが、国籍をひとつの判断要素としている条約もあります(日米租税条約等)。なお、必要に応じ、両国当局による相互協議が行われることもあります。
脱税しないための最善策:日本で確定申告する
以上のとおり、どこの国の「居住者」かは個々の状況によって異なります。
「どこで確定申告すべきか?」は、厳密には各国の税法を見ながら個別に判断しなくてはいけません。自分で判断できない場合は税理士や税務署に相談しましょう。
…とはいえ頻繁に国を移動している場合、いちいち「滞在した国の税法」と「日本との租税条約」を調べるのは現実的に難しい場合があると思います。
そういう方にはとりあえず日本で確定申告しておくことをおすすめします。
日本でちゃんと確定申告しておけば大怪我になることはありません。
その理由は次の2つです。
1. 日本での確定申告が最も無難
上で少し触れましたが、1年間の滞在国が複数あると、どの国の税法でも「居住者」とされず、消去法的に日本の「居住者」となる場合があります。
この可能性を考えると、どの国で確定申告すれば良いか分からない時は、日本で確定申告しておくのが最も無難です。
2. 租税条約で潰しが効く
後に税務調査が入って、「あなたは外国の居住者だ!」と言われたとしても、日本で確定申告しておけば軽傷で済みます。
日本と多くの国の間には二重課税の回避のための「租税条約」が結ばれているので、「日本で払った税金」を他の国の確定申告で「すでに支払った税金」とできることが多いからです。
なので、仮に海外で確定申告すべきだったとしても、日本でちゃんと確定申告していれば、結果的に追加で支払う税金はほとんどなし!、ということになります。(日本と税率が大きく変わらなければ)
また、「租税条約」を結んでいない国で問題になった場合でも、日本で払った税金を還付してもらえば、外国の確定申告で支払う税金を概ねカバーできると思います。
そして何よりも、日本で確定申告しているので意図的な「脱税者」になることはありません!
補足:「納税管理人」は必要?
日本の「居住者」として確定申告する場合は、「納税管理人」を立てる必要はありません。
納税管理人は、自分の税金に関する書類のやり取りを代理してくれる人です。
これは、日本の「非居住者」が日本で確定申告しないといけない時に必要です。
海外で活動していながらも、日本の「居住者」として確定申告するのであれば、所得税上の住所はあくまで「日本」です。
したがって、このような場合に「納税管理人」を立てるのは、論理的に矛盾するのですね。
まとめ
今回は海外ノマドのあるべき確定申告について整理しました。
海外ノマドとして活動しているのにどこの国にも税金を納めていなければ、それは脱税です。
具体的にどうすれば良いかは個々の状況によって異なりますが、意図的な「脱税者」にならないように、いずれかの国でしっかり確定申告しておきましょう。
レバテックフリーランスの記事で紹介されました
この記事はレバテックフリーランスの『海外で活躍したいあなたに向けた参考記事まとめ』で紹介いただきました。海外フリーランス生活を目指している方は、他の記事と合わせてぜひ参考にしてみてください。
2 Comments
岩崎峰之
2020-02-21 at 4:10 午後>日本にいないからといって、どこの国にも所得税を納めていない状態であれば、それは「脱税」です。
ソースはありますか?
一般的には、滞在国の居住者の条件を満たすかどうかだけです。もしどの国の居住者の条件も満たさなければ、それはどこにも税金を払う必要がありません。居住国が最低1つなければならないというルールはありません。複数国になる場合もあれば、ゼロになる場合もあります。
海外の銀行からCRS用の情報提供依頼が来ますが、居住国が複数でもゼロでも対応できるようになっています。(この情報提供依頼ではパスポートの全ページスキャンが必要になります。)
>上で少し触れましたが、1年間の滞在国が複数あると、どの国の税法でも「居住者」とされず、消去法的に日本の「居住>者」となる場合があります。
これもソースはありますか?
少なくとも日本の法律ではそのように定義されていません。そのような判例があるのでしょうか?
inabauer
2020-05-05 at 8:24 午後お返事が遅くなってしまいました。貴重なご意見をいただきありがとうございます。
> 一般的には、滞在国の居住者の条件を満たすかどうかだけです。もしどの国の居住者の条件も満たさなければ、それはどこにも税金を払う必要がありません。居住国が最低1つなければならないというル> ールはありません。複数国になる場合もあれば、ゼロになる場合もあります。
ご指摘いただいた通りだと思います。誤解を招かないように、後ほど文章を修正させていただきます。
> 少なくとも日本の法律ではそのように定義されていません。そのような判例があるのでしょうか?
判例まではあたっていません。『国税庁 – No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」の「3 複数の滞在地がある人」に
> (注) 滞在日数のみによって判断するものでないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合があります。
と記載があったことから、そういうケースもなくはないと判断しました。表現に誤りがあれば申し訳ありません。あくまでも個人的に調べた内容ですので、その点、踏まえて広く解釈いただけると幸いです。